とても眠い話
こんにちは。
昔々、それはそれは眠そうにしている男がいました。
男は誰がどう見ても眠いとわかるうつろな目と、眠くて力が入っていないであろう少し猫背になった体を倒れるすんでのところで維持しています。
実際男はここ数か月で一番眠いと感じていましたが、ここで寝るわけにはいきませんでした。
額の筋肉を使い今にも閉じかかっている瞼を持ち上げながら見えるそれは、レポートです。
正確には、今からレポートになるはずの白い画面ですが、男からするともうそれは絶望の白い悪魔でしかありませんでした。
男が必死にその白い悪魔を黒い文字で埋めていきますが、男には白と黒がぼやけて混ざり合い灰色にしか見えません。
誤字脱字はこの際気にするまいと高を括って書いている男は、頭の中に浮かんではすぐに眠気に消されてしまう文字列を大きな阿久保をしながら打ち込んでいきます。
ちょうどその作業が2時間を超えたあたりから彼はひとりごとを言い出しました。
「れぽっとれぽっと今日のれぽっと」
楽しそうに体を揺らしながらリズムを取り歌ったその歌は今にも途切れてしまいそうな小さな声でしたが、意識を保つために歌は続けます。
「今日のれぽっと今日までのれぽっとさていまなーんじだ」
男はそう言うと時計を見ました。
その長いハリと短い針はちょうど同じ12を指していました。
男はそれを見て歌をやめ笑顔で灰色の画面を殴りました。
画面には亀裂が入り液晶が漏れ出して、灰色だったほとんどを黒く染め上げました。
男は、
「最初からこうすればよかった」
と言いながら崩れるようにキーボードに顔を付け、いびきをかきながら眠ってしまいました。
今日の絵「ねむる、そしてでかい」
ではまた